社内研修の目的とは?
効果半減の「ざんねん研修」にご注意!
2024.2.5公開
外部の講師に学ぶのではなく、自社の社員に講師を務めさせる「社内研修」。既に活用している企業も多いでしょう。ですが、最初は明確だった「目的」が運用の中でぼやけてしまったり、社内研修を実施することがゴールになっている企業があります。また「どうしたらより研修効果が上がるか」に対する取組みが、おざなりになってしまうケースも残念ながらあります。実は同じ研修内容でも、ちょっとした工夫で効果を2倍以上に高めることが可能です。この記事では「ざんねん研修」を避け、「最高の研修」を実施する秘訣をお伝えします。
社内研修を実施する目的は何か?
社内研修を実施する目的は何でしょうか? この記事を読まれている人の中には「研修を実施するよう上司に言われたから」という人事担当の方もいるでしょう。「うちの会社は研修が充実していないので早々にやらなければならない」と言われたら「なぜですか?」とは聞き返さないかもしれません。ですが、なぜ実施するのか? 社内研修の目的は何なのかをハッキリさせておくことは、研修の効果にも関わることです。この章では、社内研修の目的を明確にし、その効果を最大限に引き出すポイントをお伝えします。
社内研修の目的はこの3つ
まず、最も一般的な社内研修の目的は「自社独自のノウハウを伝承すること」です。これは外部の研修講師には実施が難しく、研修参加者全員に目的を理解させる必要があります。また、研修形式で実施すれば、競争心を刺激することも可能です。
次に二つ目の目的は「OJTでは得られないスキルアップをすること」です。
OJTは各拠点、各部署で日々おこなわれ、教える内容・順番も、教育の進行度もバラバラになりがちです。しかし、社内研修であれば「この日、ここからここまでを教える」と、具体的に計画を立てることができます。また、体系的な学習は、研修形式の方が向いています。
社内研修の講師は、社内屈指の教育能力を持った人材になることが多いでしょう。同じ講師が全員に教えることで、教育のブレをなくすこともできます。
OJTと集合研修の違いを詳しく知りたい方は、コチラの記事もぜひご参照ください。
OJTと研修の共通点、eラーニングとの違い
最後に3つ目の目的は「高い学習効果を得るため」です。研修は一般的に短期集中です。わずか半日の研修で1ヶ月分の内容を学ぶこともあります。
環境は、研修会場という限定された空間・時間の中で、他の雑念がない状態です。さらに教育能力の高い研修講師から濃密なレクチャーを受けることで、社員のレベルが一気に上がることもあります。
上記のような目的達成のため、多くの企業が社内研修を実施しています。
最近は研修の充実が採用の武器になっている
昨今の就活生は、選考する企業に「社内教育制度の充実」を条件として挙げることが多くなっています。人事担当者の皆様の中にも、学生から「貴社の新人教育にはどのような仕組みがありますか?」という質問を受けた経験も多いのではないでしょうか。
豊富な研修を実施することで、特に若年層の求職者にアピールすることができます。優秀な人材の獲得に繋がる可能性が高まるのです。
社内研修と社外研修の違いと選び方
集合研修は大きく分けて、社内の講師役が教える「社内研修」と、社外の施設に出向いて、もしくは社外から講師を招いて外部の教育を受ける「社外研修」の二つがあります。それぞれがどういったものか、どうやって選べば良いかを見ていきましょう。
「社内」研修のメリット
社内研修の一番のメリットは「自社独自のノウハウを教えられる」という点です。これは社内研修ならではの強みです。また、自社内の研修ルームで、自社の社員が実施するのであれば、会場費も講師費用もかかりません。ローコストで実施できるのも、社内研修の強みです。
「社外」研修のメリット
社外研修のメリットは「プロの研修講師が教えてくれる」という点にあります。社内の研修講師は、どうしてもアマチュアになりがちです。一方で社外の研修講師は、日々同じ内容を多くの受講生に教え続けているプロフェッショナルになるため、説明し伝える力に長けています。自社内のローカルな内容は教えられませんが、一般的な社会人教育であれば、優秀な研修講師は豊富にいて、自社のニーズに合わせて選ぶことができます。研修会場に行く場合や、自社に講師を派遣してもらう場合もありますが、いずれにせよ相応の費用はかかるため、ある程度の予算を用意しておく必要があります。
社員教育上の課題や目的に合わせて選ぶ
前述した通り、社内教育・社外教育にはそれぞれの強みと特徴があります。自社の教育課題や目的、重視するポイントに合わせて選ぶことが重要です。
社内研修 | 社外研修 | |
---|---|---|
講師 | 社内 | 社外 |
コスト | 低 | 高 |
向いている教育内容 | 自社独自スキル | 一般的ビジネススキル |
社内研修における「講師」とは
社内研修を実施する場合は、社内から講師役を選ぶ必要があります。講師によっては、研修の雰囲気や成果も変わるため、どうやって選ぶかは頭を悩ませるポイントかもしれません。また「同じ研修講師を選んでも研修の効果が変わることもある」ということを知っておいた方がよいでしょう。
研修効果は講師で決まるのか
外部講師を呼ぶ場合「その研修会社は優秀な講師を派遣できるのか」を真っ先に考えることでしょう。優秀な講師とは、魅力的な教育内容をうまく伝えられる講師です。社内で講師を指名する場合も、同様の考え方で選ぶと思います。「魅力的な内容をうまく伝えられる社員は誰か?」は、非常に重要です。講師が研修成果の全てを左右する訳ではありませんが、研修の雰囲気やカラーは、やはり成果にも大きな影響を与えます。
研修の講師の選び方
たとえば「自社製品の販売を拡大するための営業研修をおこなう」としましょう。誰を講師にするべきでしょうか? 社内のトップセールスを講師にするのがよいと思った方もいるかもしれません。本当にそれがベストでしょうか? トップセールスが講師として、多くの研修時間を割くのであれば、自社セールスにおいて大きな痛手です。また、トップセールスが「自分のノウハウを伝えるのが得意」とも限りません。名選手が必ずしもよい指導者にならないことは、よくあります。また、教わる側が新人に近いメンバーだった場合はどうでしょうか? トップセールスのノウハウは理解できず、むしろ「営業主任クラスが教えてくれた方がイメージしやすい」なんてこともあります。
このように講師選びは、講師役の時間的負担や講師適性、さらに教わる側のレベルも考慮する必要があります。
同じ講師でも研修後の効果は大きく変わる
これは、受験教育をイメージするとわかりやすいでしょう。「同じ先生であれば生徒の成績は皆等しく向上するか?」と言えば、答えはNoです。
教わる側一人一人のモチベーションや、現時点でのレベルが異なれば、研修の効果は出づらくなるのです。研修参加者をしっかりグループ分けし、マインドセットを準備することで、研修の効果は出やすくなります。そういった準備をしっかりおこなうことで、研修の効果が高まり、講師役のモチベーションもアップさせることができます。
研修の実施後に何をすべきか
社内研修はコストが低いとはいえ、その準備や手配、当日の実施は大変です。研修終了後は、人事チームの中に大きな充実感が広がります。ですが、ここで終わってはいけません。実施後ちゃんと振り返りと改善をすることで、次回によりよい研修を実施することが可能です。
いつの間にか「実施すること」が目的になっていないか
社内研修は「〇〇の研修を年4回実施する」等、一度走り出すと、それをこなすことが目的になりがちです。研修は、本来社内にあったいくつもの教育課題を解決するために始まったはずです。実施後に目的をあらためて確認し、実施した研修内容に関しても、きっちり振り返ることが重要です。
研修後の振り返り
研修実施後は、必ず人事チーム内で振り返りをおこないましょう。その際、講師役の社員も参加させると、課題感の確認がしやすくなります。課題を抽出したらそれらを元に次回実施時の改善点を定めていきます。しかし、これは人事チーム側だけの視点だと、偏りが起こりやすいです。受講者側にアンケートを取り、その結果を考慮しつつ策定すると効果的です。
研修後のアンケート実施にはコツがある
研修の講師や、人事チームからしても受講者からのアンケート結果が好評だったら嬉しいものです。「大変良い」になっている箇所をよくよく見返して…ですがちょっと待ってください。改善には「褒めの言葉」より「指摘事項」や「不満の声」の方が重要です。アンケートの設問も、なるべく不満を上げやすく作ることがポイントです。社内教育だと講師役も現役の先輩社員だったりするので、忖度が働いて本音が出づらくなります。匿名アンケートにして本音を上げやすくし、集まった意見を使って客観的な振り返りをおこなえると良いですね。
研修効果を最大化するために!やりっぱなしの研修からの脱却
前述の通り、研修は実施後に改善点を抽出して、よりよいものに進化させることが重要です。『社内研修における「講師」とは」で触れたように、同じ内容の研修であっても、研修後の効果は大きく変わることがあります。
ここでは、具体的にどうすれば研修効果を最大化できるか、最高の研修に近づくかをお伝えします。
研修の参加者には研修前の準備を
研修参加者のレベルがバラバラであれば、教育内容は最もレベルの低い参加者に合わせなければいけません。ついていけない参加者が出てきてしまいます。
これを避けるために、研修の参加者に「事前テスト」をおこなうのも有効です。そしてレベルに合わせてクラス分けし、クラスによって研修の難易度を変えます。この「事前テスト」の手法は、受験教育では古くからおこなわれ、最近は外資系の企業など取り入れる会社も多くなってきました。
また、どういったレベルの研修をするにしても、参加者のモチベーションは学習結果と強い相関関係があります。研修受講前に何の意味でこの研修をするのか、この学びがどう業務に活用でき、自身の評価につながるのかを参加者たちに伝えましょう。しっかり「マインドセット」することで、研修効果は大きくあがります。
また、研修の教育内容ですが「会場に来て初めて聞く」だと、中々効果が上がらないと昨今の研究で分かってきました。人間の脳はパフォーマンスを最大化する前に、ウォーミングアップが必要です。聞いたことのある内容というのは、イメージがしやすく学習時にスッと入ってくるものです。
本格的に教わるのは研修で…ですが、最低限必要な用語や基礎知識は「事前学習」で頭に入れておく。こうすることで、当日の研修での学習効果を飛躍的に高めることができます。
研修の参加者には研修後の課題(フォローアップ)を
研修前準備を万全におこない、最高の研修を実施した…はずですが、それだけで最大の効果を得ることはできません。
「エビングハウスの忘却曲線」というのをご存知でしょうか? ひとはせっかく学習をしても、20分後には42%を忘れてしまうと言います。そしてなんと、丸一日後には74%を忘れてしまうとのことです。
これらを防ぎ学習内容を忘れず、実務で能力として発揮するには、研修が終わった後、1時間後、1日後、1週間後、1か月後に振り返り学習をおこなうのが非常に効果的です。
上記のタイミングで「研修後の課題」をやらせることができれば、学習内容を強く定着させることができます。
研修前準備と研修後課題を合理的に実施するには
「研修の前準備」と「研修後の課題」を合理的に実施する方法があります。それはLMS(learning management system)からeラーニングとして配信することです。
eラーニング形式の「事前テスト」を受け、合格者のみ研修に参加する方法です。また、参加者に研修の意義を教えて「マインドセット」をおこなうことや、基礎用語集で「事前学習」させることができるのもeラーニングです。
eラーニングであれば「いつ誰が課題や学習にアクセスしたか」「テストを合格したか」そういった「学習結果」が一目瞭然となり、サボることを防げます。
研修が終わったあとの、1時間後、1日後、1週間後、1か月後の振り返り…「研修後課題」も、eラーニングであれば「条件を満たした学習」が本人へ自動で通知されるので、学習設定だけしておけば、人事チームはその後の運用を手放しにできます。
研修など対面での学習と、Web上で自学自習するeラーニングでの学習を組み合わせることを「ブレンデッド・ラーニング」と言います。それぞれ単独での学習よりも、ブレンデッド・ラーニングでの学習の方が高い効果を得られることは、いくつかの実証実験で示されています。
ぜひ貴社でも最高の研修の実現を目指し、取り組んでみてください。
まとめ
研修を導入、実施する際には、まず研修の目的をしっかり定め、それに合わせて社内教育か社外教育かを選ぶとよいでしょう。社内研修の場合、講師選定は大事ですが、どんな研修をやったとしても振り返りが必要です。振り返りをおこなうことで課題が見つかり、それを改善していくことで「最高の研修」に近づいていきます。
研修を運用していく上で、本当に効果を最大化したいのであれば「研修前の準備」と「研修後の課題」を設定することが最も重要です。これらをしっかり用意するには相応の準備と手間が必要ですが、LMSを使いeラーニング化して配信すれば、その工数はぐっと圧縮でき、効果を最大限に向上させることができるでしょう。
※企業内教育設計へのご関心がお有りでしたらぜひお気軽に弊社へお問合せください。
本稿におけるLMS(learning management system)は、SATT製『学び~と』を想定しています。
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