OJTは高コストで損をする?
OJTのデメリットと失敗しないためにやるべきこと
2024.1.9公開
人が人に教える「OJT」。社内教育の基本であるOJTですが、実は最も高額な社内教育になりやすいことをご存じでしょうか。
この記事ではOJTなど社内教育のコスト差、さらに社内教育制度作りで陥りやすい「罠」についても解説します。
職場内で先輩が新人に仕事を教えるOJT。はたまた集合研修やeラーニングなど、現在、企業の中には複数の教育プログラムがありますよね。
しかしその取組み度合いは企業によってさまざま。
eラーニングを導入していない、充実した研修制度も社内にはないという企業でも、対面教育(OJT)だけは行っていることでしょう。
この「基本のキ」であるOJTですが、全てをOJTで賄おうとすると様々な不合理が起こる可能性があります。具体的に見ていきましょう。
目次
OJTとは
OJTとは「On-the-Job Training」の略で、職場で上司や先輩が実際の業務を通じてトレーニングをおこなうことを言います。学ぶ内容にもよりますが、教わる側のトレーニー(部下や後輩)にとっては、マニュアルや講義で学ぶよりも実践に近い能力が身につくので、効果的なトレーニングとして認知されています。実際に多くの企業で最も身近におこなわれている教育と言ってもよいでしょう。
その反面、トレーニングをおこなう上司やトレーナー(先輩)の時間を大きく取るため、その点は留意する必要があります。
OJTは、トレーナーとトレーニーが一対一か、それに近い少人数のトレーニーに限定して実施されます。そのため教育密度が濃く、実践的な業務能力を早期に高めやすいというメリットがあります。また、トレーナーとの距離感が近いため、親近感が高まりやすく、さらには組織への信頼が育成されやすいという側面も企業側から評価されています。
OJTは多くの企業が重要視している教育方法
トレーナーが時間とエネルギーを投資し、緊密な距離でトレーニーに対して早期の能力開発をおこなう「OJT」は、企業内教育において「基本の教育」であり、昭和の時代から企業内にあった「原始の教育」とも言えます。とはいえOJTは令和になった現在でも、多くの企業から一定の評価を得ています。厚生労働省の「能力開発基本調査」(令和2年度)によると「計画的なOJTを正社員に対して実施した事業所は56.9%」となっているほどです。OJTはプロの講師が実施する集合研修や、クラウド上で学習し、学習データを分析できるeラーニング等、新たな学習形態が普及した現在においても依然高い評価を得ていると言えます。
OJTの弱点(デメリット)
OJTは、教育密度が濃く、実践的な業務能力を育みやすい反面、トレーナーの時間を大きく奪い、トレーニーひとりあたりにかかる期間とコストが最も高い教育施策と言えます。一人で大勢を教える集合研修や、一度コンテンツ化してしまえば繰り返し何度でも利用できるeラーニングと比較すると、どうしても高コストになってしまいます。また、トレーナーを務める社員は組織の中でも優績で生産性の高い社員であることが多く、そういった社員の稼働を「実施のたびに」大きく奪ってしまうという点にも留意した方がよいでしょう。
また昨今では、トレーナー・トレーニーの距離感が近く実施されるために第三者的な監視の効かない密室状態の教育となりやすく、結果的にハラスメントにつながりやすいとの指摘もあります。
OJTと研修の共通点、eラーニングとの違い
今組織内における社内教育ではOJT、集合研修、eラーニングの3つはかかせなくなってきました。この3つの特性を比較すると自社の教育課題や取り組みの優先順位も見えてくるでしょう。OJTと集合研修は一つ共通点があります。それはライブ性です。今、目の前で自分のために教育が実施されていることで「熱中度」を喚起するのです。やはりこの熱中度も「自分のためだけに」トレーナーが教えてくれているOJTが、最も高まりやすいと言えるでしょう。しかし集合研修も、会場や演出手法にもよりますが会場で参加者しか受けられない教育、ということで熱中度は高まりやすいです。かたやeラーニングですが、Webを介して学習するということで熱中度を高めるには工夫が必要ですし、OJTや研修と比較すると高めづらいというのも正直なところです。ですが、その場の熱中度よりもコツコツ繰り返し学習することが学習効果につながるため、一般的に「知識教育」と呼ばれるものには高い効果を発揮します。OJTで知識教育を実施されても一度に頭に入らない、またはもったいない(せっかくのOJTでは実践教育を実施したい)という考えもあります。研修は、色々な種類の教育を実施しやすいですし、ワークの実施や会場の設定等、自由度も高いのですが、やはり繰り返し学習させたい場合は工夫(研修後も定期的にレポート提出を求める等)が必要となります。
この3つの教育はどれが良い悪いというより、それぞれの特性を把握した上で上手に使い分けることが重要です。
OJT | 集合研修 | eラーニング | |
---|---|---|---|
教育工数・コスト | × | △ | ○ |
ハラスメントリスク | × | △ | ○ |
教育への熱中度 | ◎ | ○ | △ |
反復学習 | × | × | ◎ |
向いている教育 | 実践教育 | 全て | 知識教育 |
オンラインを活用した社内教育で費用対効果を最大化
コロナ禍以降、企業でのWeb会議が当たり前となりました。物理的に距離のある拠点間でもオンラインにて業務ができるようになり、OJTもオンラインにて実施することが増えてきています。OJTの強みであった緊密性と熱中度からくる教育効率の高さ、習熟率の高さはやや低減されるものの、移動の時間やコストの削減のメリットは非常に大きく、多くの企業が活用しています。
また、オンラインは「一対多」の視聴に向いていて、OJTで教えていた内容を大勢に視聴させることで「OJTの集合研修化」をおこなう企業も増えてきました。
さらに、オンラインでのOJTや研修(Web会議システムを利用した教育)は、動画によるアーカイブ化がしやすく、アーカイブした教育をアップすれば、そのままeラーニング教材として利用できます。その教材を誰がどれくらい学習したかが自動記録できるようになりますし、それら学習データは学習後の指導や、社員への新たな目標設定にも大きく活かせるでしょう。
このように、社会の「オンライン化」はOJT・集合研修・eラーニングの垣根を低くし、距離を縮めたとも言えます。
教育とコスト。少ない予算で教育の効果を最大化する方法
企業内教育を予算や費用の観点から見てみましょう。今まで述べてきましたように一対一を基本とするOJTが結果的に最も高額な(リッチな)教育となります。次にコストがかかるのは集合研修です。外部講師だとより費用が上がりますが、集合研修は「一対多」で教育できることで一人当たりのコストを大きく圧縮できます。研修内容や会場にもよりますが、一度に数十人に教育を実施できるのは大きなメリットです。最も一人当たりのコストが安いのはeラーニングです。この教育手法も「一対多」で教育できますが、クラウドを活用する大きなメリットとして数千人、数万人への教育が簡単に実施できますし、通常のOJTや研修とは違い「何度でも繰り返し」学習を実施することが可能です。eラーニングコンテンツ化した学習内容はその企業の資産となるのです。
コストパフォーマンスが高いeラーニング
多くの場合OJTや集合研修は「実施時間分、丸々」トレーナーや講師役の時間を奪います。教育係となれる社員は多くの場合、現役の管理職やパフォーマンスの高い成績優秀社員です。こういった社員の稼働は貴重であると同時に高コストです。おそらくどんなeラーニングシステムのID利用料よりも高額ではないでしょうか。eラーニングは、多くの場合で1ID当たりの利用月額は数百円程度。高くても数千円です。社員の人件費とは比べものになりません。eラーニング化は準備が必要ですし、場合によってはプロの支援が必要ですが、導入後の費用差を考えると積極的に検討すべき教育施策であると言えます。
最良の教育を資産化し、学習結果を見える化する
OJTや集合研修で実施した教育を「資産化」し、学習データを記録することで社員の「学習を見える化」するには、LMS(learning management system)を導入しeラーニングとして実施する必要があります。
eラーニングであれば一度の教育を「教材化」できます。毎年の新人教育に、何百人何千人への全社教育に、いつでも何度でも学ばせることができるようになりますので、昨今叫ばれるようになった社内教育リソースの問題も大きな改善が見込めます。
eラーニングによる営業成績の向上も
また、指導者によって教育の質がブレてしまう問題にも貢献します。最良の指導者の教育をeラーニング教材化すればよいからです。実際、私がコンサルティングをしている国内の大手自動車会社では、最もセールス力の高い販売員の接客をeラーニング教材化させています。そのeラーニング教材を全国数万人の販売員に学習させることで、営業成績を向上させているのです。教育を平準化することにもeラーニングは役立ちます。
既存の社内教育のeラーニング化には準備が必要ですし、場合によってはプロの支援が必要です。それでも導入後のメリットを考えると、積極的に検討すべき教育施策であると言えます。
まとめ
社内教育は、「OJT」「集合研修」「eラーニング」と大きく三つの実施方法があります。それぞれの特性を把握した上で、現実的な予算と社内教育リソースの確保を鑑みた上での実施が重要となって来るかと思います。
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本稿におけるLMS(learning management system)は、SATT製『学び~と』を想定しています。
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